夕闇の迫るがごとき衝動に君の心は狂いはじめり 聖水(みず)をもて拭われぬるも君はまた泥溝(どぶ)に足を嵌め先を歩むか 君がため命も棄むというひとを離れて闇に姿を消(け)せり 過越の祭りの食事終わりしも君の戻らぬ空席(あと)の哀しき 跫(おと)もなくオリブ山に現じたる隊伍の前(さき)を君は歩めり 篝火に照らされし顔、顔、顔に死神のごとき君の貌あり 闇を秘す心を知りてなお君を「友よ」と呼ぶひとのあり 青白き月の光の映じたる二人の接吻、哀きわまれり かけがえのなきを失いし君の掌(て)に三十枚の銀の冷たき にべもなし己が仲間と頼みしは冷笑うかべ君を見捨てり 罪なきの血を売りし銀さきなみて君縊(くび)れたる、キリエ・レイソン >> 戻る