■ ナオミの愛
ルツのように自分を慕ってくる嫁を可愛く思わないはずがありません。また、年老いて孤独になってしまった身としては、若いルツに頼りたいという気持ちもあったでしょう。ナオミの心は複雑です。
(ルツを連れて行きたい。
しかし自分にはルツを幸せにしてやる力がない。
ルツに甘えてはいけないのだ。
彼女の幸せのことを考えてやらなくては・・・)
ナオミは、泣いて自分にすがりつくルツを突き放し、追い返そうとします。
「あの通り、あなたの相嫁は自分の民、自分の神のもとへ帰っていこうとしています。あなたも後を追って行きなさい」
ナオミのルツに対する精一杯の愛の言葉でした。
■ ルツの愛
これに対するルツの応答は、多くの人々によって「人間の筆になる文学作品の中で最も崇高で、最も美しい愛の告白である」と評されています。
「あなたを見捨て、あなたに背を向けて帰れなどと、そんなひどいことを強いないでください。わたしは、あなたの行かれる所に行き、お泊まりになる所に泊まります。あなたの民はわたしの民、あなたの神はわたしの神。あなたの亡くなる所でわたしも死に、そこに葬られたいのです。死んでお別れするのならともかく、そのほかのことであなたを離れるようなことをしたなら、主よ、どうかわたしを幾重にも罰してください。」
単なる親切や思いやりでは言えない言葉です。実際、弟嫁のオルパはルツと同様に心優しい女性だったのにもかかわらず、ついに自分の国に帰っていきました。先週はこのオルパを責めることはできない、人間の愛には限界があるのだというお話しをしたのです。しかし、ルツの愛はその限界を超えて大きなものであったように思えます。
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